
この記事を書いたチャーチはニューヨークに住む新聞記者でした。
毎日、毎日仕事に追いたてられる日々が続いていて
戦争、泥棒、強盗、ギャング、火事
そんな取材ばっかりで、すっかりこの世の中が嫌になっていました。
そんなある日、編集長から「この手紙に返事を書いてみないか?」と
一通の幼い文字で書かれた手紙を見せられました。
それがバージニアからの手紙でした。
ニューヨーク・サン紙様
私は、8才の女の子です。
私の友達に「サンタクロースなんていない」という子がいます。パパに聞いたら、「もしサン新聞にサンタクロースは本当にいると書いてあれば、そのとおりだと思うよ。」といいました。だから、どうか本当のことを教えてください。
サンタクロースは、本当にいるんですか?
バージニア・オハロン ニューヨーク市 西495番街115番地
チャーチは最初こう思いました。
「そうさ、君の友達の言うとおり、サンタなんていやしないさ、僕のつくっている新聞を
見てごらん。まったくひどい事件ばっかりだ。こんな世の中にサンタなんて・・・」
けれど、ふと彼は自分が手紙の少女と同じ8才だった頃のクリスマスイブの事を思い出しました。
枕元に、おとうさんから借りた特大の靴下を置いて
サンタを待ってどきどきしながら眠ったあの夜を・・・。
そして気がついたのです。
「一体いつのまに僕はサンタがいないと思うようになったのだろう。
確かにあの夜、サンタに 会 う ことは出来なかったけれど、
だからといってサンタはいないってどうして僕が決めつけることができるのだろう」
そして、チャーチはバージニアに返事を書きはじめました。
この、チャーチの身に起こった出来事。
新聞の社説という、世の中に影響力のある場で
サンタクロースは居るんだ、と言いきったチャーチ。
当時のバージニアに直接響いたかはわかりません。
(バージニアの人生には大きく影響を与えたようです・・・彼女は後々先生になります。)
ただ、チャーチが思っていた手紙の相手は
既にバージニアだけではなく
世の中の大人たち、そして自分自身だったのかな、と。
毎日に嫌気のさした自分、そして大人たちに
目に見えないものを、あると言い切る意味を
必死で伝えたかった、信じたかったのかもしれません。
バージニアへ
君の友達は、まちがっています。
その子たちはきっと、うたがい病にかかっているんだと思います。彼らは自分に見えるものだけしか信じないし、自分の小さな心で理解できないことは何でも否定するのです。
バージニア、心というものは、大人でも子どもでも、あまりかわりません。みんな小さいものなんです。人の知恵は、この限りない宇宙の中では、1匹の虫のようです。アリのような小さな存在なのです。その広く深い世界を知るには、世の中のすべてのことを理解し、知ることのできるような深い知恵が必要なんです。
そうです、バージニア、サンタクロースは、本当にいます。世に中に愛や優しさや、真心があり、毎日を美しく、楽しくしてくれるように。
もしも、サンタクロースがいなかったら、この世の中はどんなに暗く、寂しいことでしょう。あなたのようなかわいらしい子がいない世界が考えられないのと同じように、サンタクロースがいない世界なんて想像もできません。もしサンタクロースがいなかったら、子どもらしい心や、詩もロマンスもなくなってしまいます。
私たち人間の味わう喜びは、ただ目に見えるもの、手で触るもの、感じるものだけになってしまうでしょう。子供の頃のきらきら光るひかりが消えて、真っ暗になってしまいます。
サンタクロースがいないですって!
サンタクロースなんていない、と言うのは、妖精を信じないのと同じです。クリスマスにパパにお願いして、誰かやとってもらい、町中のエントツをみはってもらったらどうでしょう。サンタクロースがつかまるかもしれませんよ!でも、もしサンタクロースが見つからなかったとしても、それが何の証拠になるでしょう。サンタクロースを見た人はいません。でもそれは、サンタクロースがいないという証明ではありません。
この世の中で一番確かなものは、誰にも見えないものなのです。
あなたは、芝生の上でダンスをしている妖精を見たことがありますか?もちろん、ないでしょう!でもそれは、妖精がいない、という証拠ではないのです。この世の中にある見えないもの、見ることができないものが、全部作り事や想像したものだとは限らないのです。
赤ちゃんのガラガラを壊して、どうやって音が出るのか調べることはできます。でも、世界の目にみえないものをおおっている幕は、どんな力持ちでも、世界一の力持ちでも、破ることはできないのです。
信じる心や、詩、愛、そして、ロマンスだけが幕を開き、その向こうにあるたとえようもない美しいものや、よろこびを見せてくれるのです。その美しいものやよろこびは、全部本当のものでしょうか?バージニア、これほど確かな、これほど変わらないものは、この世の中には他にないのです。
サンタクロースがいないですって!とんでもない。
ありがたいことにサンタクロースはいるんです。永遠に死なないんです。千年たっても、百万年たっても、子供たちの心をよろこばせつづけてくれるんです。
1897年12月24日 ニューヨーク・サン紙